ラスト・ゲーム



俺の緑色の茶碗には、ふっくらした炊きたてのご飯がのせられている。

母さんの赤色の、水玉模様の茶碗には、俺より少し少な目のご飯が湯気を立てていた。







そして、俺の目に映ったものは…





親父の、青い、大きな茶碗に…たっぷりと詰められた、ご飯。








─息を、飲んだ。






母さんの方を、そうっと見やると、何も変わらぬ様子で味噌汁をつごうとしている。


一杯、

…二杯、そして…








「…母さん?」






震える俺の声に、母さんの手が、止まった。



「なぁに?」


母さんは優しい笑みを浮かべて、俺を見る。







「……一つ…、多いよ…」



…震える、声が。


その震えが、体に伝わるのがわかった。






「…どうして?」


母さんは相変わらず笑みを浮かべたまま、首を傾げる素振りを見せる。




…どうしよう、震えが、止まらない。




「……っ…だって…親父はっ…!」



─カシャン…







母さんが握っていたお玉が…床に落ちた。




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