ラスト・ゲーム
『朝霧 翔太』
携帯のサブディスプレイが、チカチカと電子文字を映し出す。
─珍しい、翔太からの電話。
寝転がったまま震える携帯に手を伸ばす。
「…もしもし」
「勉強中悪いな」
…俺がそんなことをしてるはずがないとわかっているくせに。
「…あぁ、邪魔もいいとこだよ」
「嘘だろ」
電話の向こうで笑いをこらえた翔太の声。
それを聞いて、自分の口元にも軽く笑みが浮かんだ。
「…嘘だよ」
笑いながら、ベッドでゴロリと寝返りをうつ。
「…で、何の用だよ」
「お前、進路書いたか?」
翔太から進路のという言葉が出るとは思わなかった。
俺たちは今まで一度も進路についてなど話したことがなかった。
「…書いたよ」
「嘘だろ」
俺は苦笑しながらもう一度、寝返りをうった。
「…嘘だよ」
どうやら翔太は俺のことをよくわかっているらしい。