ラスト・ゲーム
心臓が、波打つ──。
「……学校の帰りにな。フラれたけど」
…あの時、おれが二人の帰る姿を、目撃した時だ。
「でも、麻子は……誠意を持って、答えてくれたよ。……お前が、好きだって。それから、俺は麻子のこと、応援したいと思えるようになった。…麻子の幸せを、一番に願ったから──…。」
麻子の幸せを、
一番に……
「それから俺たちはそういう話もするようになった。…麻子から、全部聞いてるよ。…手紙のことも、今日の……ことも…」
田原は、息を吸い込んだ。
「なのになんで、麻子の誠意に答えてやらないんだよ!!」
田原の本気の声。
そこには熱があった。
電話からでも、空気の張りが伝わった。
「……俺だって…っ…!」
─俺だって……麻子を…
「麻子の幸せを、一番に祈ってるよ……っ!」
何よりも、一番に。
「じゃあなんで──っ!」
「俺じゃ麻子を幸せにしてやれない!」
…今の俺じゃ、できない。
こんなにも薄汚れた手のひらでは、彼女を、
幸せにしてやることが、
…できない。