ラスト・ゲーム
田原。たはら。
…田原。
頭の中で、彼の名を繰り返す。初めて向き合えた、本当の彼の名を。
田原。俺、やっと大事なことに、気付いたよ。
「ありがとう。」
…ありがとう、田原。
力強く言って、電話を切った。
…できるかできないかじゃない。
″俺は、麻子を″
……幸せに、したい。
クローゼットから、少しよれたバカでかいカバンを、取り出す。
─バスケットパンツ、
─バスケットシューズ、
─タオル、
─Tシャツ……
一気に詰め込んで、ドアを勢いよく開ける。
階段をかけ降りようとする俺の目に、
『親父』のバスケットボールが、
焦げ茶色のバスケットボールが…
映り込んだ。
俺は、それを手に取り、
感触を確かめると…すでにいっぱいのカバンに、詰め込んだ。