ラスト・ゲーム
階段を転げるようにかけ降りる。
そして、玄関のドアノブを、勢いよく…引っ張った。
「…元也!?どこ行くの!?」
背中に響いた声。
母さんが驚いて、玄関へと駆け付ける。
「………元─」
「母さん」
母さんの言葉を、遮った。
「俺、守りたいものがあるんだ。」
麻子を、幸せにしたい。
……麻子との″約束″を、
守りたい。
「だから、今……行かなきゃいけない」
ハッキリと、確かめるように。噛み締めるように…そう言った。
「″守りたいものを、守れる男″……ね」
穏やかな笑みを浮かべた、母さん。
疲れが出ているのだろうか、ずいぶんと老け込んでみえるその顔に宿った灯りは…すごく優しい色をしていた。
「あの人が、……敦也が、よく言ってたわ」
母さんは、優しい笑みを絶やさずに…俺に向かって、凛と姿勢をただす。
「元也……″守りたいものを、守れる、男になれ″」
強い光を放つ母さんの目から…温かい涙が、こぼれた。
そして、飛びきりの笑顔を俺に向ける。
「…っ…行ってこい!」