ラスト・ゲーム
ボールが、宙に…舞った。
まずそれを青木がとる。
ディフェンスを一人なんなく交わし、巧みなドリブルを見せながらこっちに攻めてくる。
翔太が、そんな青木の前に立ちはだかった。
コースを完全に塞がれた青木は、苦し紛れにパスを出す。
…俺は、その瞬間を見逃さなかった。
青木の手から飛び出したボールを、素早くカットする。
─パシッ!
叩かれたボールは、前へと飛んでいく。
「翔太…っ!」
おれの呼び掛けよりもはやく、翔太はそのボールを自分のモノとした。
向こう側にはほとんどディフェンスはおらず、翔太は一気に突っ走って、シュートを決める。
─パサッ…!
背筋が、ゾクッとした。
久しぶりの感覚。
…久しぶりの、シュートの音。
塞き止められていた体全ての血が、一気に巡った。