ラスト・ゲーム
すっかり気持ちが沈んだ所で、うっすらと目を開く。瞳にぼうっとうつりこんだ天井は、やけに白くて目の奥が痛んだ。
…空虚って、こんなかんじだろうか。
時計の針がチクタクと時を刻み、その音にもう10時を回っていたことに気付かされた。
…そしてもう一つ、親父が仕事から帰ってきていたことにも。
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「…お帰り」
居間の引き戸の隙間から見えた、親父の広い背中。
「おお、元也。いねぇのかと思ったよ。寝てたのか?」
くしゃりと微笑んだ親父は、缶ビールを片手にお笑い番組らしきものを見ていた。
室内へと踏み込んで、親父の元に歩み寄る。
でも数歩進んだところで、歩みが止まった。
「…親父」
その場に立ち尽くしたまま、親父に話しかける。
テレビから俺の方に向き直った彼は、俺の顔をじっと見つめた。
…なんだか全部見透かされてるみたいだ。
俺は拳に力を込めて、親父を見つめ返した。
「親父は…俺ぐらいの頃、夢ってあった?」