ラスト・ゲーム
途切れる呼吸をさらっていく、強い風。
坂の上には、鮮やかな緑に囲まれた…墓地が広がっていた。
汗を拭いつつ、足を止める。
風がまたサァッ…と吹いて、俺に瞬きを促した。
…あれから、もう一年。
ここに親父に会いに来るのは、初めてだった。
ふと隣を見ると、麻子も眩しそうに目を細めている。
…そんな麻子の髪の長さも、ショートだった面影はどこにもなく…いつの間にか肩を通り越して、風になびいていた。
…そう、もう一年以上がたつ。
俺は地方の大学の教育学部に、麻子は関東の方の大学へと進んだ。
麻子と会うのも、約一ヶ月ぶり。
チラリと盗み見た彼女の横顔は、少女の幼さを打ち消して…一人の女を意識させた。
一年という月日は、あまり何も変えていないようで…
…でも少し、違う。
ただ、握っている手の温もりは。
それだけは、変わっていない気がした。