ラスト・ゲーム
麻子と二人、親父の前で…手を合わせる。
何だか胸がいっぱいで…何を、何から、どう語りかけたらいいのか、わからなくて。
でも、強く…ただ、強く手を合わせた。
蝉の声が、まるで降り注ぐシャワーのようにそんな俺たちに浴びせられる。
「…ねぇ、元」
麻子が、静かに口を開いた。
「…蝉って、土の中にいなきゃいけない時間はすごく長いのに……やっと外に出れても、一週間しか生きられないんだって」
麻子は真剣に、俺の目を見つめた。
俺も麻子を、見つめ返した。
「…だから、あんなに一生懸命泣いてるのかな」
自分の命を、自分の存在を…この世に少しでも残しておくために──。
途切れない、騒がしい鳴き声。
…それはきっと、命の主張。
ジンジンと、耳の奥が痛くなる。
「……だからね、元…」