ラスト・ゲーム
麻子の言葉の続きは、言わなくても、わかった。
″だからね、元…″
″あたしたちも、一生懸命生きよう……″
「……うん」
俺は強く…
強く、頷いた。
ずっと抱え込んでいた、焦げ茶色のボールに…目を落とす。
『親父……返しにきたよ』
…そして、ゆっくりと、その場に置こうとして…
俺は、その手を…止めた。
「修ちゃん、バスケ部入るの~?」
坂の下から響いた、まだ幼い女の子の声。
「うん!中学生になったらバスケ部に入って、スリーポイントシュートとか、いっぱい決めるんだ~!」
嬉しそうな男の子の声が、それに答えた。
続く楽しそうな声たちは、坂の下にある公園から響いているようだ。
「元、行ってみようか!」
麻子の明るい笑顔の誘いと共に、俺たちは公園へと坂を走り降りた。