ラスト・ゲーム
一瞬親父の顔が、いきなり何だとでも言うようなに強ばる。
しかし親父はすぐに優しい笑みを浮かべて…ゆっくり、話し出した。
「…なぁ、元也。俺の仕事が何か知ってるか?」
今度は多分、俺の方が一体何なんだと言う顔をしていただろう。
拍子抜けの…質問だった。
「…銀行員だろ」
「ああ、そうだ」
親父は納得したかのようにまた一口ビールを飲んだ。
「じゃあ元也、お前は俺が高校生の時銀行員になりたいと夢見ていたと思うか?」
銀行員はとても立派な職業だが、バスケ命の親父の、内面からしても見た目からしても…そういう風には思えなかった。
「…思わない」
「だろ」
親父はハハっと笑って、そして言った。
「俺がお前くらいの時、将来の夢とかそんなもん、なかったさ」