ラスト・ゲーム
登るときはあんなに辛かったのに…降りるのは、まるで自らの体が風になったかのようだ。
耳元を吹き抜ける空気が、気持ちいい。
公園には、先程の声の主と思われる少年少女…そして、古びて錆び付いた─バスケットゴールがあった。
「修ちゃんがはいるなら、あたしもバスケやろうかなぁ~」
少し頬の赤い少女が、ゴールの側に腰掛けながら少年に話しかけている。
「やろうよ!だって、バスケやれたら絶対かっこいいもん!」
息をはずませ、目を爛々と輝かせてそれに答える少年。
そんな二人の会話に、微笑ましくも嬉しくも感じて、胸の奥が暖かくなる。
…麻子もそんな気持ちだったのだろうか。
悪戯っぽく目配せを交わした麻子と俺。
俺はその二人の側の古びたバスケットゴールへと、持っていたボールを素早くドリブルで運び……
─スパッ!
そのままシュートを決めた。