ラスト・ゲーム
麻子は巧みなドリブルで向かってきたかと思うと、俺に完全に当たる前に、少女に柔らかなパスを送った。
初めてとは思えない体さばきでそれを受け取る少女。
麻子の『シュート!』の掛け声と共に、精一杯の力で、ゴールへとボールを放った。
─弧を描く、茶色い光。
伸びた弧の先は、リングにぶつかってガコッと鈍い音を立てた。
「あ~…」
少女はとても残念そうに肩を落とす。
ボールはリングに当たって呆気なく落ちていったものの…この少女にはなかなかバスケのセンスがあるように思った。
「おしい~!でもすごい上手だよっ!初めてとは思えない!」
「…ほんと?」
麻子の言葉に、俯いていた彼女は目を輝かせて満面の笑みを浮かべる。