ラスト・ゲーム
─パスっ!
─それは、何度も俺の背中を疼かせた音。
…入った。
見事な弧を描き、修の手から放たれたボールは…俺たちの期待に、答えた。
「修!やったな…っ──」
…言い終わる前に、まるで放たれた弾丸のように俺に飛び付いてきた修。
涙目で、でも…眩しい程の笑み。
俺は修の頭をくしゃっとなぜた。
…心から、嬉しかった。
「お兄ちゃん、ありがとう」
修ははちきれんばかりの笑顔で俺に言った。
「ぼく、もっともっとがんばって、お兄ちゃんみたいになりたい!」
…修の言葉に、昔の自分を重ねる。
″いつか、親父のような…男に″
俺は……こんな俺でも、誰かの目標になれるのかな。
″親父…″
俺は手に抱えている焦げ茶色のボールを見つめた。
″…元也″
「…修、これ…やるよ」
ゆっくりと、目の前にいる修に…それを手渡した。
「……いい…の…?」
おずおずと小さな手を伸ばし、それを受けとる修。
「うん、いいんだ」
俺はゆっくりと、そして優しく…笑った。