ラスト・ゲーム
「…なかった?」
「ああ。」
テレビの電源をおとした親父。
今までテレビの中で笑っていた人達の声が途絶えて、よけいに静まり返ったように感じる。
「俺は高校時代バスケをやれるのが一番だった。別に大学だって行きたいからってわけじゃない。行けるところに行っただけだ。それでできれば良いところに就職したいと思って、今の仕事につけただけだ。」
「………。」
「でも俺は後悔なんてしてない。どうして俺は夢を見つけられなかったのかなんて思わない。確かに自分の夢を見つけて、天職につけるヤツは幸せかもしれないな。でもな、元也。別に夢がないヤツの人生に価値が無いわけじゃない。」
一息ついて、親父は俺に正面から向き合った。
「守りたいものを守れるヤツになれ。それだけで十分価値があるんだよ。」