ラスト・ゲーム

麻子



□□



「最近シュートがあんまり決まらないのよね」



麻子はふぅ…と短いため息をついて背伸びをした。



いつもの川原の帰り道。


今日は久しぶりにフリースローで俺が勝った。
麻子はその嫌がらせか、「頭がよくなるように」と言って、一体作った会社はどこだとツッコミたくなる

『DHAたっぷり★カツオジュース』

…を俺に買い与えた。



「あ~…スランプってヤツ?」

びっくりするほどまずそうなカツオジュースにストローを刺しながら、横目に麻子を見る。


「そうなのかなぁ…試合も近いのにやんなっちゃう」


口を尖らせて視線を遠くに投げる麻子。

俺は一口だけジュースをすすって、これを出した会社はつぶれると確信した。



「ふふ、おいしい?」


麻子がひきつった俺の顔を見て尋ねた。



「…なかなかいけるな」

「うそだ」


「うそじゃねえよ、てかお前も飲めよ」


麻子にずいとつきだした俺の手をぐいと戻して麻子は笑った。



「絶対嫌」



…やっぱり嫌がらせか。





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