ラスト・ゲーム
麻子は麻子で、田原に眩しいような笑顔を向けている。
そんな麻子にもいらだってしまう自分がいた。
…俺以外のヤツに、そんな顔で笑いかけるなよ。
そんな勝手なことを思ってしまう俺は、廊下と教室の敷居をまるで境界線のように感じて、二人が作り出す空気に入り込むことができないでいた。
「…あれ?元、どしたの?」
麻子の声。俺が声をかける前に気付いた麻子が俺の元にかけてきた。
「…や。たいしたことじゃないんだけど…さ」
疎外感を拭いきれない俺の、微妙な返答。
麻子は心配そうな、不思議そうな顔で俺を見つめている。
「お前、この前シュート率悪いって言ってただろ。…だから朝に体育館、早めに開けてもらえるようにカバに言ったから、よかったら…練習しにこいよ」
「…え、ほ、ほんとに!?ていうか覚えててくれたんだ…」
麻子は嬉しそうな、優しい笑顔を浮かべた。そして、
「…元も、くるの?」
下から見上げて、小さく尋ねる。
「行っちゃダメなのかよ」
「ダメじゃない!」
麻子は即答してニッコリ笑った。