ラスト・ゲーム
気が付くと、時計の針はもう20分を過ぎていた。
7時半になれば他の部員もやってくる。
…この時間もあと10分少々。
そんなことを思いながらふと麻子の方を見ると、麻子もちょうど、こっちを見ていた。
「元、…1on1…しない?」
いきなりの麻子の誘い。
フリースローならいやというほどにやってきたが、今まで一度も、麻子と1on1勝負はしたことがなかった。
「…まぁしてやってもいいけど?」
「うわっエラそ~」
麻子は頬を膨らませて、俺の肩を叩く。
…ほんとは嬉しかったんだけど。
麻子は持っていたボールを、しっかりと持ち直した。
「遠慮は、しないでね」
麻子の真剣な目に、俺は親父とは違う緊張を覚えた。
「…わかった」
俺も、真剣な目で答える。
─そして、麻子はゆっくりとドリブルを始めた。