ラスト・ゲーム
(─ウソだろ。)
麻子の手から離れたボールは、真っ直ぐゴールへと飛んで行き……手前のリングに一度はじかれ、
一瞬空間が止まったかのように、
まるでゴールか落下かを選ぶように。
…リングの上。
そしてゆっくりグラついたかと思うと…
そのまま、落ちていった。
「あ~、やっぱり無理やりだったかぁ」
麻子は笑って、落ちてきたボールを手に吸い付けるかのようにして拾いあげる。
(この位置でディフェンスがついていて、後ろに飛んでシュートかよ…)
力のある男子でも難しいぞ、そんなの。
…全く、麻子には感心してしまった。
「元!」
麻子が俺にボールをパスして、ディフェンスの体型を作る。
…次は、俺か。
ボールを持つ手に、心なしか力が入ったような気がした。