ラスト・ゲーム
「ちわーっす!」
……その時だった。
体育館に大きな声が響いたのは。
一年の青木。いつもかかさず朝練に来ているヤツだった。
「先輩、今日早いっすね!」
「…おう」
青木がニコニコした顔でこちらを見てくるので、麻子との30分が終わりを告げたことをちょっと残念に思ったのは本当だったが…なんだかこちらも笑い返してしまう。
…青木は憎めないヤツだった。
「元。よかったらお父さんの話、帰りに聞かせてね」
麻子はそう囁くと、そそくさと体育館から出て行った。
今日は男バスの朝練の日だったので、まだ他の部員が来ない間、体育館に残されたのは俺と青木の二人。
俺はシュートを打ちながら…今さっき別れたばかりなのに、もう帰りが待ち遠しくなっていた。
パシュッ、という心地よい音がするのと同時に、俺の背中に声が響いた。
「先輩」