ラスト・ゲーム
麻子の出ていったドアから、呼び声の方に目を向けると……青木が俺に近づいてきていた。
「どうした?」
青木は俯いて、そして答えた。
「あの…俺……さっきの1on1…見てました」
さらに丸くなり、青木は小さな声で続ける。
「…俺、すごい感動しました。……俺ずっと前から、先輩に憧れてたんです」
俺はいきなりの青木の言葉に、目を丸くした。
「先輩は、俺の目標なんです」
そう言い切って、俯き加減から上げた青木の顔は…真っ赤だった。
また俺の顔から、嬉しいニヤニヤ笑いが出そうになる。必死に押さえて冷静な顔を作ろうとする俺も、多分真っ赤で。
「…おう」
おれは不器用にそれだけ言って、青木の頭をくしゃっとなぜた。
…親父が、俺にするみたいに。
青木は照れ笑いをして、また自分がいたシュートリングに戻って行った。
『先輩は、俺の目標なんです』
本当に、嬉しかった。
…嬉しかった。