ラスト・ゲーム
委員会が始まっても、俺は全くうわの空だった。
…隣の田原のせい。
ずっとコイツのせいで落ち着かない。
頭の中を、いろんな思いが複雑にぐるぐる、回っていた。
俺はきっと、コイツのあの強い目に見つめられるとどうしても自分が劣った人間のように見えてしまうんだと思う。
田原にはいつも余裕があるから。だから、俺はコイツが苦手なんだ。
そんな風に考える自分は余裕なんて微塵もないと気付いて、余計に複雑な気分になった。
俺の委員会用に渡されたピンクのノートには、たった三行の文字も書き込まれないまま。
委員会が、終わりを告げた。
□□
所々でガサガサとノートを片付ける作業が始まる。
教室内の誰よりも早く立ち上がり、急いでバカでかいカバンをかついだ俺。
颯爽と踵を返し、教室のドアに手をかける。
─その時。
「早水!下駄箱行くんだったら、一緒に行かね?」
振りかえらなくてもわかる。
声の主は、田原。