ラスト・ゲーム
いつもはない組み合わせの、田原と…俺。
だからだろうか。
4階から1階へと向かう並んだ二足の上靴も、なんだかソワソワと落ち着かないでいる気がした。
「部活はどう?」
とか
「試合近いな」
とか。
当たり障りのない話をしながら、ひとつひとつ、確かめるように階段を降りた。
俺たちは別に前から、仲が悪いっ…てわけじゃなかった。
でも俺は気付いていた。
俺たちの間の空気が、なぜか前までよりよそよそしいことに。
…それはまるで
「一つの話題」 を避けているかのように。
「あ!」
もう一階へと差し掛かった頃、俺は教室にバスケットシューズを置いてきてしまったことに気が付いた。
「わり、忘れ物したわ。先行ってて」
すこしホッとしたように田原の側を離れて、階段をかけ上がる。
「早水!」
そんな俺の背中。
一本の声が、
突き刺さった。