ラスト・ゲーム
五感が全く無くなったような気がした。
…ただ、わかるのは背中に一筋の汗が、つたったことだけ。
『麻子のことが好きなのか?』
それが、「避けてきた話題」…だった。
どれくらい時間がたったのだろう。
今の俺にできるのは、田原の目から逃げないこと。
…それだけだった。
逃げたくない。
…負けたく、ない。
重い口を開き、正面から田原に向き合う。
「そういうのって……お前に、関係あるの?」
俺たちの間にある、ピンとキツくはりつめた空気。
それは互いが、互いの一挙一動を見逃すまいとしているかのようだ。
「…あるよ」
田原も、きつく結んでいた口を開いた。
「関係…あるよ」
─ザアァッ…
風が、木々を…揺らす。
前髪が靡いて、視界をかすめ取った。