ラスト・ゲーム



ぶつかり合う、2つの気迫。

摩擦が起こりそうなその競り合い。


―少しでも気を抜いたら、そこで殺られる。



ドリブルをつきながら親父を見たまま、心を読まれまいと気を張る俺を、親父もしかと見据える。


″行け!元也!″

自分に声を上げ、俺は一瞬後ろに下がりすぐに体をうねらせ、何とか見つけた親父の隙間に下半身をねじこもうとする。
しかし親父もそう簡単には許さない。
ぴたりと吸い付くかのように体を寄せたディフェンスに、俺の体は一瞬ひるむ。あまりにもキツいディフェンスにバランスを崩しそうになりながらも、俺は必死にボールをキープする。

…それで精一杯だ。

シュート体型にすら持ち込む余地がない。


″くそっ″


追い詰められる。


…その時俺の脳裏に浮かんだのは、




″麻子のシュート″





だった。





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