ラスト・ゲーム
それは俺が、はじめて本気の親父から奪うことができた、シュートだった。
目線をゴールから、そっと親父の方へと移す。
その顔は、子どもの成長を喜ぶような、でもそれだけではない─対等な立場で俺を見てくれているような、
優しい…顔だったんだ。
□□
親父 5本中、5本、
俺 5本中、1本。
…今日の結果。
やっぱり、あれから一度も俺のボールがゴールをくぐることはなかった。
″1本″…これだってまぐれに決まってる。
でも俺の中には、何だか熱いものが込み上げていた。
やり終えた感溢れるため息と共に、その場にへたりこんだ俺。
その頭に、コツン…と、親父の拳があたった。
「まだまだだな」
いつものセリフを言って、親父も、俺と顔を並ばせてしゃがんだ。
そして、俺の目をのぞきこんで、言った。
「…でも、上手くなった」