ラスト・ゲーム
もう麻子と別れる道の角。
麻子と帰る道は、時間がたつのが…すごく、速くて。
何でかなぁ。
英語の授業の時は止まっているかのようにゆっくりすすむくせに…
肩には異様にデカイエナメルバッグ、心にはそんな矛盾を抱えながら…わざとゆっくり歩いた。
どちらともなく、互いの靴が歩みを止める。
「がんばろうね」
そう言って俺をじっと見つめる麻子の目は、一瞬息をのんでしまうほどキレイだと思った。
「…おう、絶対ベスト4入りしてやる」
「ふふ、絶対よ」
俺が意気込んでみせると、麻子はまたいつものようなくったくない笑顔で、夕焼けの赤にすいこまれるように走っていく。
彼女のスカートの端が、赤い逆光の中で小刻みに揺れていた。
…何だかまた、くすぐったい。
『元からバスケをとったら、ただのバカになっちゃうもんね』
麻子の後ろ姿が見えなくなった頃……自分も赤に染まりながら、俺は小さくつぶやいた。
「…バスケバカ、か。」
うん、
悪くは…ない。