ラスト・ゲーム
「元!1on1の前に、昨日のヤツ教えて!!」
麻子がそう言ったのは二日目の朝練。
…なのに次の日、3日目にして、麻子は俺との1on1でバックシュートを、決めやがった。
俺が違う技でゴールする度に、次の日には、その技は麻子のものとなっていて。
…飲み込み早すぎ、だろ。
(このままじゃ、俺が負ける日も近いんじゃないのか?)
そんな思いがふと浮かんで、一人苦笑した。
…麻子は媚びない。
男だろうが、女だろうが、関係なく、一生懸命なプレーをする。俺からしてみれば小さな体で、真剣に向き合ってくる。
そこが麻子のいい所でもあり、俺の好きな理由の一つでもあるのかもしれない。
…負けたら、シャレにならないけど。
麻子には「かっこいい俺」、でいたいから。
…好きなヤツの前ではは、「かっこいい俺」だけを見せたいんだ。
すでに勉強でカッコ良くはなれないとわかりきっている俺には、バスケしか残っていない訳で。
…やっぱり、バスケバカなのかな。
そんなことを考えてまた苦笑する俺に、今日も時計が、『麻子との残り時間あと五分』を示す。
─さあ、勝負の始まりだ。