ラスト・ゲーム
『守りたいもの』
なぁ、親父。
そうやって守りたいものをハッキリ言えるって、凄いことだと思うんだ。
多分、本当に守れていてこそ、そうやってハッキリ口にできることなんだ。
俺の守りたいものは……?
いつか、はっきり、
″麻子″だって
言える男に……なりたい。
それで呆れるくらい、
…そう、親父と母さんが作ったような
幸せな家庭を、築きたい。
…こんなこと、口に出しては、絶対言えないけど。
俺、親父を……尊敬してるよ。
夕闇に包まれた庭先。
洗濯物の端がハタと舞って、その存在を主張している。
視線の先にある大きな背中に、心の中で呼び掛けた照れ臭い台詞。
返事は無い。
それでよかった。