ラスト・ゲーム
ボールを追って走ると、体育館に滞った空気が波立つ。
まるで風が吹くように。
…いや違う、自分が風になるんだ。
「早水先輩っ!」
青木の呼び掛けが耳に届くと同時に、俺にボールが回る。
…手のひらに、吸い付くボールの感触。
そのまま流れるようにシュート体勢へと持ち込む。
─スパッ!
空気が切れるような、その音。
…背筋が、震えた。
俺たちを飲み込む熱はさらに温度をあげ、脳がとろけてしまいそうな幻覚を覚える。でもそれは、決して嫌な感覚じゃない。
自分の中に何かが生まれるような、そんな感じ。
部員は一人も欠けてはおらず、全員が全員、真剣な熱を放ってプレーしていた。俺もバスケをする時は頭には何も残らない。
それがかえって、今の俺には嬉しかった。