ラスト・ゲーム



ボールを追って走ると、体育館に滞った空気が波立つ。

まるで風が吹くように。

…いや違う、自分が風になるんだ。



「早水先輩っ!」

青木の呼び掛けが耳に届くと同時に、俺にボールが回る。


…手のひらに、吸い付くボールの感触。


そのまま流れるようにシュート体勢へと持ち込む。




─スパッ!


空気が切れるような、その音。



…背筋が、震えた。



俺たちを飲み込む熱はさらに温度をあげ、脳がとろけてしまいそうな幻覚を覚える。でもそれは、決して嫌な感覚じゃない。

自分の中に何かが生まれるような、そんな感じ。




部員は一人も欠けてはおらず、全員が全員、真剣な熱を放ってプレーしていた。俺もバスケをする時は頭には何も残らない。


それがかえって、今の俺には嬉しかった。





< 99 / 209 >

この作品をシェア

pagetop