月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
人形と…
「帰ったらすぐ報告書を書かなきゃいけないんだから、あんたがいないと困るのよ」

警視庁に勤めるあたしがN県にいるのは、N県警から捜査協力の要請があったためだ。

正確に言うと、協力を要請されたのは達郎なのだが。

警視庁公認の民間協力員である達郎の活動内容は、東京以外でも知られている。

今回のように都外から協力要請が来るのは珍しくない。

司法一家に生まれ育った達郎は、それらにふたつ返事で応じるのだが、その度にお目付役兼報告係として同行を命じられるこっちはたまったもんじゃない。

今回だっていつもの達郎のペースに付き合わされた末に、ようやく事件解決と思ったら、すぐにとんぼ帰り。

まったく、ぼやきたいのはこっちだっての。

「あー、フルーツカステラ食いたかったな」

達郎が言ってるのは行きで見かけた地元銘菓のことだ。

帰りに食べればいいじゃないと急かしたのを、根に持っているのだ。

ちっ、イヤミな奴。

「ほら」

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