月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
北島警視はやはり、あたしたちに気を使ってくれてたのだ。

「で、捜索の結果、9月8日朝に鳥海広義の遺体が発見されたわけか」

「そういうことよ」

「容疑者は見つかったのか?」

「それらしい人物は浮かんでないわ」

よってN県警も、誘拐殺人ではなく、遺体遺棄容疑で捜査を進めている。

「指紋や遺留品は?」

あたしは首を振った。

「家の中に足跡はあったんだよな」

「大きさから成人男性のものらしいということはわかったわ」

靴の種類は某メーカーから発売されている一足数千円のスニーカー。

正直、何もわかっていないに等しい状態だ。

「隣近所の話は?怪しい物音を聞いたとか、不審者の目撃証言はなかったのか」

「鳥海家の隣には診療所が一軒あるだけなのよ」

診療所を開いているのは内科医の仁藤隆(61)。

この仁藤は広義の主治医で、鳥海家とは普段から交流があったそうだ。

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