月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
「事件があった日は何をしていたんだ」

「9月7日は午前8時から正午まで診察にあたっていたそうよ」

このことはその日訪れた患者たちからも裏付けを得ている。

「40世帯しか住んでない集落の診療所に、ひっきりなしに患者が訪れてたのか?」

「お年寄りの多い集落らしいからね」

長生きすれば、体のあちこちにガタがくる。

診察にかこつけて、世間話をして帰っていく面々も多いらしい。

「仁藤も、多くの患者たちも、怪しい物音や不審者には気付かなかったと証言してるわ」

「そうか」

最初から期待してなかったのか、達郎の返事はあっさりしたものだった。

「息子夫婦の行動は?」

「9月7日は午前8時頃に家を出てるわ」

「それは確かなのか」

「息子夫婦はいつも仁藤の診療所を訪れて、父をよろしくお願いしますと挨拶してから店に向かうそうよ」

7日の朝もそうだったと仁藤は証言している。

達郎は唇を尖らせた。

考え事をする時の癖だ。

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