月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
「鳥海広義って人物は、よっぽど周囲に迷惑かけたくなかったんだな」

「ほら、お年寄りって、そういうところあるじゃない」

あたしは以前、近所のゴミ捨て場でお婆さんを助けたことがある。

夜勤明けの早朝、近所のゴミ捨て場を通りかかったら、ゴミ袋の中に埋もれるようにしてお婆さんが倒れていた。

あわてて助け起こして事情を聞いたところ、ゴミを捨てに来て転んでしまったとのこと。

打ちどころが悪かったらしく、動けなくなってしまったというのだ。

なんで大声で助けを呼ばなかったのか訊いたら

『家族や近所の人を起こしてしまうから』

と言われア然とした。

「春先だったから良かったけど、真冬だったら凍死してたかもしれないのよ」

「迷惑かけたくないと気を使うにも限度ってもんがあるな」

達郎にも思いあたる事が幾つかあるようだった。

「で、結局その主治医の気遣いは無駄に終わってしまったわけか」

「結果だけ見ればね」

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