月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
あたしはKitKatを取り出すと、助手席に放り投げた。

やがてガサガサと包装を破る音が聞こえてきた。

無言になったところを見ると、機嫌は直ったようだ。

甘党の扱いは楽でいい。

「ん?」

しばらく走ったところで達郎が訝しげな声をあげた。

「どうしたの」

「あれを見ろよ」

あたしの問い掛けに、達郎は前方を指さした。

車のスピードを緩めながらそこを見ると、道端に紺色の物体が転がっているのが見えた。

車を停めて外に出る。

小降りだった雨は霧雨に変わっていた。

「寝袋だな」

物体、もとい寝袋の脇に屈み込んだ達郎が、黒い絹の手袋を取り出しながら言った。

寝袋のチャックは一番上まで上がっている。

表面は雨で濡れていた。

だいぶ前からここにあったようだ。

「あたしが開けるわ」

あたしは捜査用の白手袋をはめた。

刑事の勘が、思い切り働いている。

あたしは寝袋のチャックに手をかけると、ゆっくり引き下ろした。
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