月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
「あなたはこの写真館の御主人ですか」

達郎があたしの真後ろから顔を出した。

コイツ、ストロボがたかれた瞬間、ちゃっかりあたしの後ろに隠れやがったな。

あたしはにらみつけたが、当の達郎はまったく気にした風はない。

抗議した所で屁理屈が返ってくるのがオチだ。

「はい。私はこの写真館の主人です」

男は林与一と名乗った。

「警察の方ってことはウチの件について調べに来てくれたんですよね?」

「ええ、まぁ」

うなずいてはみたものの、あたしがここへ来たのはあくまで達郎の意思によるものだ。

無責任に思われるかもしれないが、写真館のガラスが割られたのと、鳥海広義の事件は今のところ別件である。

二つの事件に関連が見出だせない今、写真館の件を調べるのはあくまでもN県警であって、警視庁のあたしではない。

「いゃあホント腹たつよねぇー」

そんなあたしの心の内を知ってか知らずか、林は憤懣やるかたないといった感じで唇を尖らせた。

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