月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
「すでに訊かれたかと思いますが、犯人に心当たりはありますか?」

あたしの問い掛けに、林は首を振った。

「さっきも言ったけど、俺は平和に暮らしてきたんだ。うらみを買う覚えなんてないねぇ」

「犯人は金銭が目的だったのかもしれませんよ」

「こんな田舎の写真館に金を盗りにくる奴なんているもんかい」

そりゃそうですね、と言いそうになって慌てて口をつぐんだ。

写真館というだけあって一応スタジオらしい設備は整っていたが、TVで見るような撮影スタジオほどの規模ではない。

人が出入りしている様子もなさそうだ。

ぶっちゃけ、お客さんているのかしらと思った。

「メシの種がどこにあるのか気になるのかい?」

林にそう訊かれ、あたしはドキリとした。

そんなにあちこちジロジロ見てたのかしら。

「すみません、普段は写真館って来ないもので」

ごまかしてもしょうがないので、あたしは素直に頭を下げた。

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