月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
「いいっていいって、気にすんな」

林は右手をひらひらと振りながら笑った。

見た目に反して(失礼)気のいい人物のようだ。

「俺みたいな写真屋ってのはさ、客に来てもらうんじゃなくて、こっちから出向くんだ」

首をひねるあたしの横で、達郎がなるほどとうなずいた。

「イベントとかに、カメラマンとして参加するんですね」

「その通り。あんた勘がいいな」

町内会の旅行や地元の運動会など、それらに参加して写真を撮るのが、主な収入源だという。

「あとは学校だね。少子化だなんだって言われてるけど、修学旅行や年度末なんてのは大忙しさ」

「年度末、ですか?」

「卒業アルバムを作るんだよ」

あー、なるほど。

「俺が撮るアルバム写真は評判いいんだよ。生徒がみんな笑顔だってね」

「へぇ。なんかコツでもあるんですか?」

「コツなんて威張って言うもんはないけどね、シャッター押す時に面白い顔したりはするよ」

面白い顔…。

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