月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
あたしは心の片隅で小さく「やっぱり」とつぶやいた。

「別に一昨日は深酒しなかったんだけどなぁ」

林はモジャモジャ頭をかき回した。

「ガラスを割る時、音をたてないように細工したのかもしれませんね」

達郎の言葉に、林は首をかしげた。

「そんなことできるのかい?」

「ガラスにテープを貼って、その上から叩いたり、吸盤を貼り付けたりと、幾つか方法はあります」

あたしも映画やドラマで見たことがある。

「でも逆にそうまでしてガラスを割る理由って何かしら」

「そこに目的の物があったからだろ」

「目的の物って…特に盗まれた物はなかったんですよね?」

あたしがそう訊くと、林はうなずいた。

「目的の物という全てが、盗まれる物とは限らない」

「え?」

あたしは達郎の言っている事が、よくわからなかった。

「林さん、店頭に飾ってあった写真は全て破かれていたと伺いましたが」

「ああそうだよ、みんな破かれた」

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