月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
人形はなぜ捨てられた?
「全部つながったって、どういう意味よ」

写真館を出た後、車に乗り込んだあたしは助手席の達郎にそう迫った。

「言い方を変えるとファクターが出そろったってことだな」

「だからそれを分かりやすく説明しなさい」

これ以上もったいぶったらひっぱたくぞ。

「そもそも、この事件の犯人は誰なのよ?」

「犯人は、鳥海夫妻だ」

達郎は、あっさりと言った。

「もともと第三者が鳥海広義を拉致・誘拐する理由なんかなかった。口封じならその場で殺せばよかったんだからな」

また体の不自由な老人を連れて行くのは逃亡の妨げになるだけ。

連れ出して殺害するのも不自然。

同じ理由で営利誘拐というのも考えにくいと、達郎は語った。

莫大な資産をもつ大金持ち相手ならともかく、鳥海広義は市井の人間だというのがその理由だ。

「昼間、人目につきやすい場所でリスクを負うのは割りにあわないだろ」

「てことは誘拐は狂言で息子夫婦が鳥海広義を殺害したってわけ?」

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