月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
「狂言誘拐を仕組んだのは間違いないだろう。しかし、鳥海広義を殺してはいない」
達郎はあたしに、広義の部屋の写真を出すように言った。
「多くの証言にあるように、広義の部屋は明るく清潔に保たれていた。それは一朝一夕で出来ることじゃない」
確かにそうだ。
長い間、息子夫婦が父親に愛情を注いでいたから出来たことだ。
「それ故に、あの夫婦が鳥海広義を殺害したとは考えにくい」
達郎はあたしから受け取った写真を見ながら言った。
「じゃあ、鳥海広義を殺したのは誰なの?」
「広義は殺されたんじゃない。自殺したんだ」
「自殺!?」
「だから広義の遺体には他殺を示す吉川線がなかったんだ」
「ちょっと待って、広義は寝たきりの人間だったのよ?」
「だが寝返りもうてたし、腕を使って起き上がることもできた。それならこのタンスの取手に浴衣の帯を結んで、首を吊ることは可能だ」
そう言って達郎は、写真に写っていた和箪笥を指で弾いた。
達郎はあたしに、広義の部屋の写真を出すように言った。
「多くの証言にあるように、広義の部屋は明るく清潔に保たれていた。それは一朝一夕で出来ることじゃない」
確かにそうだ。
長い間、息子夫婦が父親に愛情を注いでいたから出来たことだ。
「それ故に、あの夫婦が鳥海広義を殺害したとは考えにくい」
達郎はあたしから受け取った写真を見ながら言った。
「じゃあ、鳥海広義を殺したのは誰なの?」
「広義は殺されたんじゃない。自殺したんだ」
「自殺!?」
「だから広義の遺体には他殺を示す吉川線がなかったんだ」
「ちょっと待って、広義は寝たきりの人間だったのよ?」
「だが寝返りもうてたし、腕を使って起き上がることもできた。それならこのタンスの取手に浴衣の帯を結んで、首を吊ることは可能だ」
そう言って達郎は、写真に写っていた和箪笥を指で弾いた。