月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
土中の死体は最も腐敗しにくく、ドイツの法医学者カスペルの実験によると、土中の死体の腐敗速度は空気中の腐敗速度の8分の1だったそうだ。

「じゃあ広義が自殺したのは9月7日以前?」

「毎日、仁藤が往診していたことを忘れるなよ」

「ということは9月6日の午後3時以降ね」

「埋めたのは午後8時以降だろうな」

「どうしてそう言い切れるのよ」

「光子が仁藤の家を訪れていたからだ」

ああ、なるほど。

鳥海家と仁藤家は隣り合っている。

広義の遺体を埋めるところを見られる可能性はゼロじゃない。

「光子は見張り役だったのね」

「そういうことだ。土中に埋めることを提案したのも光子だったかもな」

その理由はわかった。

光子の両親は土砂災害で亡くなり、5日後に発見されている。

その時の経験から思いついたのだろう。

あたしの脳裏に、庭で見つけた、作りかけの花壇が浮かんだ。

その花壇のことを触れられ、うろたえる哲夫の姿も。

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