月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
鳥海広義の遺体は、あの花壇があった場所に埋められていたのだ。

いや、広義の遺体を掘り出した後、花壇に偽装したというべきか。

「広義を庭へと埋めた翌日の9月7日、夫妻はいつものように店に出て、昼に帰宅。そのまま警察に通報した」

「空き巣に入られたように偽装工作をしてから、ね」

あたしの補足に達郎はうなずいた。

「夜に捜索が行われた後、夫妻は9月8日の未明に広義の遺体を掘り出し、発見場所の林の中へ遺体を遺棄した。雨が降っていたことが、夫妻には幸いしただろうな」

「どうしてよ?」

「遺体に土がついてたら偽装がバレるからさ」

あ、そうか。

「広義の遺体は寝袋に包んでいただろうが、いくら注意しても多少は土がつく。だが、雨が全てを洗い流した」

雨、か。

「ね、達郎」

あたしは頭の中に浮かんだキーワードについて訊いてみることにした。

あたしにとってそれは、この事件の発端と言ってもいいもの。

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