月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
つまりあのマネキンは人形愛好家の持ち物だったと言いたいわけだ。

だが愛した人形が野ざらしになるのを不憫に思った愛好家は、寝袋で保護して人形を投棄した…。

うーん、他人の趣味にアレコレ口出しする気はないけど、なんかサイコな香りがするなー…。

「目立つ場所に捨てとけば警察が『保護』してくれるからな」

「しょーもないこと言ってんじゃないわよ」

あたしは達郎を肘で小突いた。

「まぁ、単なるイタズラかもしれませんがね」

いずれにせよ、と北島警視は言葉を続ける。

「こう忙しい時に、迷惑な話です」

警視は再び首すじをかいた。

「何か他にやっかいな事件でも?」

あたしは訊いた。

「この先の集落に住む夫婦の家に空巣が入りましてね。おまけに夫婦と同居していた85歳の父親が、行方不明になったんですよ」

「行方不明ですか」

「行方不明というのは適当でないかもしれませんが」

「人質として拉致されたと?」

< 7 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop