月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
「広義の遺体を発見させるためさ」

「そのためにマネキン人形を捨てたの?」

まだ意味がわからない。

「他殺に見せかけるために、広義の遺体を遺棄した。しかしその遺体は見つけてもらわなければ意味はない」

そして、と達郎は言葉を続ける。

「遺体の発見は早いにこしたことはない」

それはそうだ。

遺体が何日も放置されて腐敗が進んだら、土中に埋めたトリックは意味をなさなくなるかもしれない。

「遺体の遺棄場所を知ってるのは自分たちだけ。しかし自分たちで遺体を発見したら疑われる事は確実だ」

確かに。

誘拐された父親の遺体を息子夫婦が発見するというのは、劇的だが不自然だ。

「だから広義の遺体は、どうしても他人に発見させる必要があった」

そこで、と達郎は人差し指を立てた。

「鳥海夫妻が目をつけたのが、先月に起きた、マネキン人形の不法投棄事件だ」

あたしはマネキン人形を見つけた後にやってきた大勢の警官たちを思い出した。

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