月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
「しかし写真にはネガがある」

「写真館にまた同じ写真が飾られる可能性があるわね」

「また、夫妻は気付いたんだ」

「何に?」

「写真があろうとなかろうと、店のマネキン人形が1体減ったことを気付く人間がいるかもしれないって事に」

確かにそうだ。

マネキン人形が減ったことを指摘されれば、理由を訊かれる。

その場しのぎの嘘をついても、父親の事件にマネキン人形が関わったと知られれば、噂に尾ひれがつくだろう。

嘘が、思わぬ形で自分たちの首を絞めるかもしれない。

「だから夫妻は店を完全に閉めて、この土地を離れることにした…恐らくはそんなとこだろう」

そう言って達郎は推理を締めくくった。

推理だから想像も多く入っている。

しかし結論は間違ってないだろう。

あたしは今まで達郎の推理が真実を突き止めた事例を、数多く見てきた。

「捜査方針の見直しが必要ね」

「とりあえずマネキンについて突っ込んでみるのも手じゃないか」

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