月と太陽の事件簿15/人形はなぜ捨てられる
「誘拐の可能性も考えられます」

「身代金の要求とかは無いんですよね?」

「はい。なので、最悪の事態も想定されるんですよ」

「殺されたってことですか」

「その父親は寝たきりだったらしいですからね。侵入してきた賊と鉢合わせしてしまったら逃げられません」

確かにそれは一刻を争う事態だ。

「今朝も地元の消防団と合同で捜索にあたっています」

「じゃあ、さっきいた人たちは」

「その父親の捜索も兼ねて、参加してもらっているんですよ」

なるほどね。

あたしが納得していると1人の私服警官が北島警視のもとに歩み寄り、何やら耳打ちした。

北島警視はそうか、とうなずくと、あたしたちを見た。

「林の中で何か見つかったそうです」

ぼかした言い方をしたのは、あたしたちに一緒に来てもらいたいからだろう。

東京に戻るのは遅くなるけど仕方ない。

達郎にも異存はなさそうだった。

「こちらです」

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