歴史の星空に飛び込んで


沖田さんは、おぼつかない足取りで立ち上がり、庭に置いてある私と揃いの下駄を履いて歩き出してしまうので、私も急いで後を追った。


植木屋さんが端正込めて育てた藤の花。


沖田さんの隣に立つと、沖田さんは私を見て、それからぽきりと三つ花房のついた枝を折ってしまった。


「だめじゃないですか」


言っているのに、沖田さんは私の髪に手を触れて、耳にかけるとそこに藤の花をさした。


「綺麗」


子どもみたいに、純粋に沖田さんは言うので、ボッとあつくなる。

菅野さん、沖田さんが私を呼ぶ。



「あの本を、読んで聞かせてくれませんか」




息も忘れて、私はゆっくり瞳を閉じた。

沖田さんは何を見ながら言ったのだろう。



「………………はい。」



沖田さん、
沖田さん、
沖田さん、
沖田さん、
沖田さん、



さみしいよ。





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