サクラ咲ク





***




「悠希さん、おかえりなさい。」





屯所に戻ると沖田さんに会った。
どうやらお昼ご飯のお片付けをしているらしく、手には空になったお皿の乗ったお盆があった。



「ただいま、です!」


「幸せそうですねぇ~いい事でもありましたか?」



上機嫌に笑う私に沖田さんが尋ねた。



「はい!実は、さっきまでお梅さんと芹沢局長と一緒にいたんですっ」



幸せの余韻に浸ったままそう言った私に、沖田さんが一瞬表情を強張らせた。



「…沖田さん?」



不思議に思って首を傾げると、沖田さんは少し慌てた様に笑った。




「いえ、すみません。お二人と会われたんですね……いい人だったでしょう?」



一瞬、小さな風が吹いて木々をざわめかせた。




「はい!大好きになっちゃいました!」





そう言って笑った私を、沖田さんは少し悲しげな笑顔で見つめていたことに、私は気づかなかった。






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