サクラ咲ク
午後の巡察は特に何事もなく終わり、午後の稽古が終わり全てが一段落した時にはもう空には月が見えていた。
お風呂の支度をして、廊下を歩いていると暗闇の中に四つの影を見つけた。
(…誰かしら。)
暗闇に目を凝らしてみると、段々とその姿が認識できた。
近藤さんと土方さん…
それから原田さんと沖田さんね…
あんな暗闇で何してるのかしら。
疑問を抱きながらも、私は足音を立てないようにその場を離れ、お風呂に向かった。
「お梅さーん!私です!」
芹沢局長達のいる離れの玄関でそう声をかけると、中が少し騒がしくなりすぐに扉が開いた。
「悠希!待ちくたびれたぞ!」
芹沢局長が少し赤い顔でそう出迎えてくれた。
お酒、飲んでたのかしら。
「すみません、お待たせしました!あの…お梅さんは…?」
「梅なら風呂を沸かしとる。突き当たりを左に行けば風呂じゃ。」
「はい!ありがとうございます!」
教えてくれた芹沢局長にお礼を言って廊下を小走りする。
「あ、あった!お梅さんっ!」
お風呂を沸かしているお梅さんを見つけてその背中に声をかける。
「あぁ、よかったわ!丁度湧いてきたとこやねん!早う入りなさいな。」
その言葉に嬉々と頷いて私は袴を脱ぎ、初めての江戸の風呂に入った。
「…っあー…極楽ぅ…」
実はこっちに来てからは一度もお風呂に入っていなかった。
否、入れなかった、が正しい。
だってここは男所帯だし、一応女の私が入るのは…ねぇ?
そこまでチャレンジャーになる勇気はない。
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